「納税猶予」という言葉があります。
その字のごとく、納税を猶予するものであり、払わなくても良いという訳ではありません。
ただし、この納税猶予制度には、納税を猶予したのち一定の要件を満たせば納税を免除するという規定が適用できる場合があります。
「免除」ですと、税金を払わなくても良いということです。
納税を猶予し、さらにその後免除することができるかもしれないというのですから、もちろん条件は厳しくなります。
ただし、適用できるのに、適用しないというのも、もったいない気がいたします。
条件をしっかりと精査したうえで、適用するか否かを決定していくことが重要でしょう。
相続税の納税猶予には、大きく2つの制度があります。
一つは、
もう一つは、 です。
(租税特別措置法第七十条の六の二)
農業を営んでいた被相続人等から相続人が一定の農地等を相続し、農業を営む場合等には、
農地等の価額のうち農業投資価格による価額を超える部分に対応する相続税額については、
その相続した農地等について相続人が農業を営んでいる又は特定貸付けを行っている限り、その納税が猶予されます。
ただし、納税猶予期間中は相続税の申告期限から3年目ごとに、「継続届出書」を提出することが必要です。
この農地等納税猶予税額は、次のいずれかに該当することとなった場合には、その納税が免除されます。
(1) 特例の適用を受けた相続人が死亡した場合
(2) 特例の適用を受けた相続人が、この特例の適用を受けている農地等(特例農地等)の全部を贈与税の納税猶予が適用される生前一括贈与をした場合
(3) 特例の適用を受けた相続人が相続税の申告期限から農業を20年間継続した場合
(市街化区域内農地等に対応する農地等納税猶予税額の部分に限ります。)
(租税特別措置法第七十条の七の二)
後継者である相続人等(経営承継相続人等)が、相続等により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式等を先代経営者である被相続人から取得し、
その会社を経営していく場合には、その経営承継相続人等が納付すべき相続税のうち、
その非上場株式等(一定の部分に限ります。)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。
この猶予された税額は、経営承継相続人等が死亡した場合などは納付が免除されます。
この特例を適用するには、様々な要件をクリアする必要があります。
(前提条件)後継者が定まっていること
(1)会社の要件
(2)先代経営者(株を渡す人)の要件
(3)後継者(株をもらう人)の要件
(4)特例適用後 5年間の事業継続要件
(5)特例適用後 株式保有要件
(6)特例適用後 会社継続要件
※特例適用後 要件を満たせなくなった場合には、猶予税額と利子税を一括で納付しなくてはなりません。
詳しくは、(20)非上場株式等についての相続税納税猶予 をご覧ください。
納税を猶予される特別な制度ですので、要件はもちろん厳しくなっています。 しかし納めなくても良い相続税を納める必要はないわけですから、要件に合致する場合には しっかりと特例を使っていただきたいと思っています。 |