相続人がいない場合、民法では、次のような手続きをとることを定めています。
①相続財産法人の成立 死亡した者の「相続人がいることが明らかでない」場合、その者の相続財産は法人となり精算の対象となる(民法951条) ②相続財産管理人の選任 相続財産法人の財産管理人として相続財産管理人が家庭裁判所によって選任される(952条1項) 相続財産管理人には、債権の申出をするようにとの公告を行う等の義務がある(957条1項) ③残余財産の帰属 ①②の後、相続財産は特別縁故者に分与され、分与後の残存財産は相続財産法人から国家へと引き継がれる(959条) 特別縁故者又は国へ |
簡単に言うと、相続人がいない場合には、家庭裁判所に選任された財産管理人によって相続財産は特別縁故者などに分与され、 最終的に残った財産は国のものとなります。
こういった場合、相続財産を分与された特別縁故者は、相続税を支払うことになります。
特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者のことです。 自然人には限らないので、被相続人がお世話になっていた老人ホームや市町村、菩提寺などでも良いとされています。 特別縁故者は、相続人捜索の公告期間の満了後3ヶ月以内に、財産の分与を請求しなければならず、 これに対して家庭裁判所が「相当」と認めた場合に、清算後残存すべき相続財産の全部または一部の分与を受けることとなります。(民法958条3)
こういった手続きは、文章にするととても簡単なように思えます。
しかし、被相続人や相続人の協力のない中で、相続財産を洗い出したり、相続人を捜索したりしていくのはとても時間を要します。
また、相続財産があるか分からない被相続人について、その手続きをする弁護士費用に誰が負担するのか、問題になったりします。
やはり、相続人がいない方は、遺言を残すなどの対応がお世話になった方などへの配慮として必要ではないでしょうか?
今まで関与させていただいた相続の中で、相続人がいない場合が何度かありました。 ある件では、相続人がいないため、お寺に相続財産をすべて遺贈する旨を遺言で残し、 葬儀や死後の手続きの一切をお寺にお任せするように頼んだというものです。 宗教法人への遺贈になったため、相続税の他に譲渡所得税などの他の税金も発生しましたが、 お寺の方が死後の手続きすべてを丁寧に進めてくださいました。やはり事前の準備や根回しは重要です。 別件で、相続人のすべてが相続放棄してしまったというものもあります。 この時は、相続人ではなく、被相続人の生前に関わっていた人達が大変な思いをして、死後の処理をしました。 人生は人それぞれですが、自分の人生に責任を持てるように生きていきたいものです。 |