2017年9月6日 「都市農地維持へ税優遇」
本日の日経新聞の一面に「都市農地維持へ税優遇」という記事が載っていました。
1992年に生産緑地制度が導入され、その8割が30年後である2022年に生産緑地の優遇期間の期限を迎えるため、宅地転用が一気に加速しないように対策をすすめるというもの。
優遇期間の期限切れの際に、営農をあきらめる人が増えれば、一気に宅地化が進み住宅価額の急落などの問題が発生しかねない。
農水省では、生産緑地を維持することでその影響を和らげようと、生産緑地を企業やNPO法人に農地を貸し出せば相続税の納税猶予の対象とすることを検討している。年末の税制改正に向けて協議を進めていくようだが、生産緑地を所有している地主さんも注視していく必要があるのではないかと思います。
2017年5月11日 遺産分割の一部が未分割の場合の小規模宅地の特例適用
平成27年1月1日から施行されている改正相続税法により、相続税の対象となったが、小規模宅地等の特例を適用すれば相続税額は発生しないという方も多いかと思います。
そのため、小規模宅地等の特例の適用可否がとても重要になっており、相続税の対象である場合には、二世帯住宅建設時や新居建設時、同居、また遺産分割の時にも、小規模宅地等の特例について最新の注意を払わなければならなくなっています。
例えば、遺産分割が未分割の場合には、相続税の申告期限において「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、後に更正の請求をして小規模宅地等の特例を適用させることになります。
しかし、全体の遺産分割はできていないものの、小規模宅地等の特例の適用対象となる土地については申告期限内に分割が決定した、という場合には、注意が必要です。
法定申告期限内に分割済みの特例対象宅地等については、法令上、更正の請求により小規模宅地等の特例を認める旨の規定がないことから、同特例を適用することはできません(措置法69の4➅)。
遺産分割が長引きそうな時、相続税申告期限に注意して、分割を進めていく必要があります。
2017年4月18日 死亡保険金は特別受益に準じて持戻しの対象となるか
相続において、生命保険契約はとても重要です。
特定の相続人だけが多額の死亡保険金を受け取るというケースもよく見受けられます。
しかし、死亡保険金は、相続人である受取人が被保険者の死亡時に、保険契約に基づいて、自己の固有の権利として取得するものであり、被保険者であった被相続人の相続財産ではなく、受取人の固有の財産とされています。
そのため、原則として特定の人だけが死亡保険金を受け取っていたとしても、それを加算することなく遺産分割をすることになります。
また仮に受取人である相続人が相続放棄をしたとしても、その相続人は生命保険金は受け取ることができます。
ここで問題になるのが、特定の相続人だけが死亡保険金を受け取る場合に、相続人間で不公平にならないかということです。
もし死亡保険金が著しく不公平な場合には、この死亡保険金を特別受益として具体的相続分を算定する「特別受益の持戻し」の対象になるという最高裁の判決が出ています。
最高裁の判決要旨は次の通りです。
被相続人を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人とする養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる。 |
≪死亡保険金が持戻しの対象となるか争われた裁判例≫
(1)最高裁 平成16年10月29日
■遺産総額 6,000万円
★各相続人 1,000万円余
養老保険 576万円 ⇒持戻しの対象なし
(保険金受取人は介護のために自宅を改築するなど献身的に介護)
(2)東京高裁 平成17年10月27日
■遺産総額 1億円
死亡保険金 1億円 ⇒特別受益に準じて持戻し
(保険金受取人は歯科医師免許のための費用や車2台など3,000万円ほどの援助を受けていた)
(3)名古屋高裁 平成18年3月27日
■遺産総額 8,720万円
後妻に死亡保険金 5,150万円 ⇒特別受益に準じて持戻し
(後妻との婚姻期間が3年5ヶ月、相続開始時の価額における割合59%、分割時の価額における割合77%)
2014年1月23日 平成26年度税制改正(相続税・贈与税関連)
平成26年度の税制改正の内容を整理してみましょう。
(1)医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予の創設
■相続税の納税猶予
相続人が持分の定めのある医療法人の持分を相続または遺贈により取得した場合において、その医療法人が相続税の申告期限において『認定医療法人』であるときは、担保提供を条件に、当該認定医療法人に係る相続税額については、移行計画の満了までその納税を猶予し、移行期間内に相続人が持分のすべてを放棄した場合には、猶予税額を免除する。
■贈与税の納税猶予
持分の定めのある医療法人の出資者が持分を放棄したことにより他の出資者の持分の価額が増加することについて、その増加額に相当する額(経済的利益)の贈与を受けたものとみなして当該他の出資者に贈与税が課税される場合において、その医療法人が認定医療法人であるときは、担保提供を条件に、当該出資者が納付すべき贈与税額のうち、その経済的利益に対応する贈与税額については、移行計画の期間満了までその納税を猶予し、移行期間内にその持分のすべてを放棄した場合には、猶予税額を免除する。
(2)相続税の取得費加算の特例の見直し
相続財産である土地等を譲渡した場合の譲渡所得税の特例について、譲渡所得の金額の計算上、取得費に加算する金額を、その譲渡した土地等に対応する相続税相当額のみとする。
<現状の譲渡所得の計算>
売却代金 ― 取得費 ― 取得費加算額(すべての土地等に対する相続税額) ― 諸費用等
<平成27年1月1日以後の相続財産に係る譲渡所得の計算>
売却代金 ― 取得費 ― 取得費加算額(売却した土地等に対する相続税額) ― 諸費用等
2013年11月14日 「賃貸不動産で節税」の前に
11月13日の日経新聞に、「賃貸不動産で節税」の前に という記事が載っていました。
相続税を節税するためには、借入をして大きなアパートやマンションを建てるのが一番だと思っていらっしゃる方は、今でもたくさんいらっしゃっる気がします。
ただ、アパートやマンション経営も、「事業」であり、建てたら節税できるというだけではなく、建てた後、「経営」をしていかなければならないということを無視してしまっている人が多く見受けられます。
「一括借り上げだから大丈夫」は間違いです。
一括借り上げだとしても、退去時の修繕や、外壁などの大規模修繕など、経営判断を伴うことは多いものです。
年金受給権評価での節税もなくなり、今、相続税対策をするなら何をすべきか。
やはり、早いうちから計画を立てて贈与や資産の形を税金が少なくて済む形に変えていくことが一番大事だと思っています。
ただし、早いうちから先の相続のことを考えると、家族の状況などに応じて変更していく必要が出てきます。
その時に困らないように、臨機応変に対応できる状態にしておくのも大事です。
これをすれば相続税対策になる!というものは、ないと思っています。
家族の状況や、資産の状況に応じて、その家族にとって一番いい形を考えていくのが税理士の仕事だと思っています。
私の知識や経験が、納税者の方々のお役に立てるように、これからも日々精進してまいりたいと思います。
2013年9月18日 コンビニでの住民票や印鑑証明書の交付サービス
先ほど、サークルKサンクスに寄ったら、『平成25年5月27日より住民票などの交付サービスを始めました』とありました。
忙しい方や、平日お休みが取れない方には便利なんだろうなと思い、調べてみました。
コンビニでの交付サービスは便利だが、その利用には事前の登録が必要になります。
各自治体で、住民基本台帳カードを取得し、コンビニサービスを利用するという登録が必要だという。
しかし、愛知県ではまだ一宮市しかそのサービスには対応していないとのこと。
まだまだ普及していないのが実情なんだな、と思いました。
また、通常、住民票や印鑑証明書を取得すると各自治体ごとの異なる用紙で証明書が発行されますが、コンビニで取得する場合にはどのような用紙になるのかも疑問です。
名古屋市の場合、栄のサービスセンターや地下鉄の駅長室で、平日の夕方以降や土日に証明書等を取得することができます。
そのため、コンビニサービスにはまだ参加していないのかな、とも思いました。
横浜に住んでいたころには、横浜駅の行政サービスコーナーをよく利用しました。横浜駅にある会社に勤めていたので、会社のお昼休みに住民票や印鑑証明書を取りに行くことも可能でした。
多くの市町村では、主要駅などに、出張所や行政サービスセンターを設け、夕方以降や土日に対応しているので、コンビニサービスにまで手を広げているところも少ないのかな、とも思います。
多くの相続手続きにおいては、各相続人の方に印鑑証明書や戸籍を取得していただくことになります。もちろん司法書士などに依頼することも可能ですが、印鑑証明書はご自身で取得していただくことになります。
ご自身に都合のいいサービスを利用しながら、対応いただければ幸いです。
2013年9月6日 相続時、未支給の共済年金の税金
公的年金は、原則として2か月毎支払があり、その月と前月分が偶数月に振り込まれます。そうすると、奇数月に亡くなった場合には当月分が、偶数月になくなった場合には2か月分が未支給になる場合が多い。
平成7年11月7日の最高裁の判決で、国民年金の未支給年金について相続財産性が否定され、その未支給年金の税金については相続税の対象とするのではなく、相続人固有の権利として相続人の一時所得として所得税を課税するということになっている。
国税庁の質疑応答事例を見ても、国民年金法における未支給年金は遺族の一時所得になる、とある。
さて、国民年金の未支給年金については明らかになっているが、共済年金についてはどうだろうか。
国民年金法と厚生年金法については、記述の仕方が異なるものの、おおむね同じような条文構成になっていて、次のような特徴があります。
①「未支給年金(国民年金法19条)」「未支給の保険給付(厚生年金法37条)」という条文がある。
②上記は遺族が「自己の名で」申請できる。
③上記の給付に関する条文は生活保障の目的から設けられている。
④未支給年金請求権は、被相続人の財産とは考えにくい。
しかし、共済年金法は違うのです。
①未支給の年金についての条文はない。
②「年金の支給期間」という条文の中で年金は死亡の月まで給付する、という規定になっている。
③「支払未済の給付請求書」を提出して請求する。
④国民年金や厚生年金のように受け取る人に制限がない。
※ただし、JR,JT,NTTの共済年金は請求する用紙も国民年金や厚生年金と同じ用紙である。
条文だけを読むと、未支給の共済年金を相続人固有の権利と捉えることは、いささか難しいように感じる。
税研のホームページでも共済年金の未支給年金については相続人の一時所得だと当たり前のように記載されている。
本当にそうなのだろうか。とてもグレーな部分である。
ただ、相続人の一時所得として課税された方が相続人にすると有利ではある。
一時所得には特別控除が50万円あり、未支給年金が50万円を超えることは少ないからだ。
税金って、本当に難しい。
たぶん税務署に聞いても、相続人の一時所得と答えるだろう。
そうであれば、一時所得として申告すべきなのかもしれない。
2013年9月2日 法務局で公図が取得できない場合の土地評価
本日より新学期ですが、雨。
夏休みの暑さとは違って少し涼しく、子供だけでなく大人もいつまでも夏休み気分ではいられないな、と思います。
さて、表題の件ですが
相続税申告のために土地を評価する場合、路線価地域の評価に際して基本的に法務局で管理されている公図を利用します。
しかし、時々、公図がない土地や、公図が縮尺不明であったり、地形と相違がある場合などがあります。
そういった時には、市役所などの固定資産税課で管理している公図のような地図を用いたりもします。
市役所などにより、地籍図、地番図などいろいろな呼び方をされていますが、公図のように地番が入っていて、縮尺が記載されている地図です。
法務局で公図を取得すると450円の手数料がかかりますが、
固定資産税課の地番図の場合、手数料は市町村によって異なり、名古屋市の場合には350円、他の市では200円だったり、土地の所有者が取得する場合には無料のところもあります。
公図は、電子管理されている市町村は、他の県の法務局でも取得できたりしますが、固定資産税課の地番図の場合にはその固定資産税課に行かないと取得できないケースが多いので、遠方の場合には少し不便なところもあります。
名古屋市の場合には、支所でも取得できるのはありがたいな、と思っています。
土地の評価は、相続税申告を主に行っている税理士の腕の見せ所でもあるので、慎重に丁寧にやりたいと思います。
2013年5月16日 トーマスクックのトラベラーズチェック 換金相続手続き
トラベラーズチェック(T/C)を取り扱う銀行が減ってきています。
数年前に作ったトラベラーズチェックを残したまま相続が発生してしまった場合、どうしたら良いでしょうか?
通常、発行会社に相続手続きを依頼し、換金してもらいます。
発行会社とは、トラベラーズチェックを作ってもらった銀行などの金融機関ではなく、「issur」の欄に記載されている会社です。
『issur:Mitsubishi Bank』とあれば、三菱東京UFJ]銀行にて相続手続きを行います。
さて、『issur:ThomasCook』とある場合、どうしたらいいでしょうか?
トーマスクックのトラベラーズチェックは、日本では販売を終了しており、トーマスクックを引き継いだトラベレックス社のトラベレックスジャパンでは、トーマスクックのトラベラーズチェックの相続手続きは行っていません。
トラベレックスジャパンに問い合わせてみたところ、日本国内で換金するには、トーマスクックのトラベラーズチェックの相続換金手続きを行っている金融機関に行くか、イギリスの本社と相続手続きを行うとのことでした。
調べてみると、名古屋市内でトーマスクックのトラベラーズチェックの相続人の代理署名による相続換金手続きを行っているところはありません。
また、相続ではない本人によるトーマスクックのトラベラーズチェックの換金手続きも、ワールドカレンシーショップ(052-218-1156)は取扱いをしているようですが、他ではほとんど取扱いがないようです。
そこで、イギリスの本社にメールをして、相続手続きの仕方を教えてもらいました。
①すべてのトラベラーズチェックに「VOID(無効)」と記入し、左上端を切り取るか、すべてにパンチ穴をあける。
②手続き書類に種類や住所等を記入する。
③除籍謄本の原本と返信用封筒、トラベラーズチェックと手続き書類をイギリスに郵送。
④除籍謄本の原本は返送。後日、日本の銀行口座に手数料を引いた残金が入金される。
という手続きになります。
イギリス本社の担当メールアドレスは、トラベレックスジャパンに電話をすると、教えてくれます。
日本で手続きできないというのは、とても不便に思いました。
2013年4月11日 銀行等の相続手続き
①通帳を記帳する。
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②公共料金や様々な引落しについて、変更手続きをする。
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③銀行に連絡を入れる。電話でOK。
※都市銀行等は東京などに相続センターがある場合が多く、地方銀行等の場合には、支店単位で対応してくれるところが多い。
※この連絡を入れると、預金の出し入れはもちろん、ATMでの通帳の記帳もできなくなるので注意する。
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④書類を一式郵送してもらう。
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⑤説明書きに従って書類を用意すればそんなに難しくはないが、専門用語が多いので注意。
分からなければ、支店等に行って教えてもらうのが早い。どの支店でもOK。
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⑥名義変更か、もしくは振替、振込の手続き。(銀行によって異なる)
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⑦相続税が発生する場合には、残高証明書の発行を依頼する。場合によっては取引履歴が必要になる場合もある。
↓
⑧名義変更や入金が完了すれば、手続き完了。
手続き自体は難しくはありませんが、書類の準備が一番手間のかかるところです。
皆さん、生まれてから死亡までの原戸籍の準備が一番大変だったとおっしゃる方が多いです。
原戸籍の準備は専門家に任せれば、簡単に取得できます。
うまく専門家を利用して、ご自身の負担にならないように手続きを進めていただきたいと思っています。