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生前対策 (16)海外への資産移転は有効?

 近年、海外への資産移転に関する興味が増し、それに関わるご質問などを受けることもあります。

 まず、海外へ資産を移転することで、課税逃れができないかとお考えの方へ。
 原則として課税逃れはできないものと考えておいた方がいいのではないでしょうか、と答えます。
 2009年のロンドンサミット以降、租税条約等により国・地域の間で情報交換を行うネットワークが急速に拡大しています。 日本においては、金融機関から海外へ送金した場合または受けた場合、 その金額が100万円を超える場合には、税務署へ調書が提出されます。
 また今後は、5,000万円を超える預金や不動産を海外に保有する個人はに、国外財産に関する調書の提出をしなければなりません。
 海外へ資産を移転し、課税逃れをすることは「脱税」です。
 「脱税」を考える前に、合法的な節税を考えられる方が賢明だと思います。

 海外へ資産移転する一番のメリットは、資産保全の観点からではないでしょうか。 日本という国の「カントリーリスク」への対応だと思います。
 資産を守り、そして増やしていくために、資産分散が必要だと考えられています。 いろいろな形態の資産を組み合わせ、いろいろな国の資産を組み合わせることが重要です。日本の国債はどんどん増えています。日本の将来が心配です。

海外の生命保険

 少し前までは、日本に支店のない海外生命保険は、相続税でいう「みなし財産」に含まれていなかったので 「所得税」で「一時所得」として課税されていました。 そのため、相続税の税率最高50%に比べ、所得税で一時所得であれば受取金額の1/2に最高40%の税率となるため、 節税対策として利用できました。
 それも、平成19年に法改正されて海外生命保険も「みなし財産」に含まれたため、相続税の節税対策としての効果はなくなりました。

 しかし、海外生保のリターンは日本とは比べ物にならないほど良く、 海外では日本では認められていない運用方法もあったりして、資産運用として考えられる方は良いかも知れません。

 もしも、海外の生命保険に加入したい方がいらっしゃるなら、日本では契約することはできません。
 日本の保険業法(第186条1、2)では、「日本に支店等を設けない外国保険業者は、日本に住所もしくは居所を有する人 (中略)に係る保険契約を締結してはならない」「日本に支店等を設けない外国保険業者に対して日本の住所もしくは居所を有する人 (中略)に係る保険契約の申し込みをしようとする者は、当該申し込みを行うときまでに、 内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の許可を受けなければならない」とされています。 またに違反した場合は「50万円以下の過料に処する」とされています。

 個人的な見解としては、リターンが高いということは、何か見えていないリスクがあるのではないか? 日本では当たり前のことでも、その国の法律に抵触してしまうことはないか? その国のカントリーリスクはどの程度か?と様々な疑問が解決できないため、私個人はお勧めすることができません。
 興味がある方は、専門に取り扱っている方にしっかりとお話しを聞いて、自己判断で考えていただければと思っています。

 海外への資産の移転によって脱税することはできません。 それよりも、資産の守り方の一つとして海外を検討してみてはいかがでしょうか?
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