例えば、被相続人に不動産事業をしていた場合など、
相続が発生してから遺産分割協議が決まるまでの間も家賃収入などが入金されてくることがあります。
そのような場合、どのように確定申告すればいいのでしょうか?
遺産分割協議が決まるまでの間の不動産賃貸収入は、各相続人の法定相続分により按分計算します。
もし遺産分割協議が決まらないまま確定申告をしなくてはならない場合には、
各相続人それぞれが、賃貸収入のうち法定相続分を乗じて計算した収入金額について不動産所得を確定申告します。
もし、年の途中に分割協議が決まった場合には、分割協議がまとまる前までは法定相続分、
まとまった後は、その実際に相続した不動産から発生した賃貸収入が、その人が確定申告で計算すべき不動産所得の賃貸収入になります。
これが原則です。
もし、遺産分割協議が整い、分割が確定した場合であっても、
その効果は未分割期間中の所得の帰属に影響を及ぼすものではないので、
分割の確定を理由とする更正の請求又は修正申告を行うことはできません。
ただし、このような計申告は、大変複雑で相続人全員で協力して行わなければならないため、
相続開始に遡ってその収益物件を相続した相続人に帰属するものとして計算して確定申告をすることが、
実務上行われていることが多いでしょう。
ただし、国税庁から示されている原則とは異なるので、
その計算の仕方によって税額に大きな差がでてくる場合には注意する必要があると思います。
そして、消費税の納税義務が関係してくる場合にはさらに注意が必要です。
消費税の納税負担は大きいので、申告の仕方によって、納税義務や税額負担も変わってくる可能性があります。
消費税負担が問題になり、どの物件を誰が相続するか、もめてしまう可能性も出てきます。
相続まで事業を行っていなかった方が事業を相続した場合、相続人の相続があった年の消費税の納税義務は、
被相続人の基準期間(個人は相続開始の2年前の属する1年)の課税売上高により判定します。注意しましょう。
民法ではどうなっているでしょうか?
民法では、遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるとされています。
(民法第909条)
ただし、相続が発生し、遺産の分割協議が確定するまでの間の不動産の賃料収入が誰に帰属するかについて争われた訴訟の上告審判決で、
最高裁判所は2005年9月8日、「分割協議の結果にかかわらず、法定相続分で分けるべきだ」との判断を示しました。
その所有権は相続まで遡るが、そこから生まれる収益については、遺産分割が決まるまでの分は法定相続人みんなで分けるというわけです。
(「遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果
生ずる金銭債権たる賃料債権は,遺産とは別個の財産というべきであって,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得」(最判平17・9・8民集59・7・1931))
参考)国税庁タックスアンサー
不動産収入が多い場合や、消費税の納税義務がある場合などには、遺産分割協議までの確定申告の仕方についても、 工夫する必要があります。相続人にとって、何が有利なのかを検討して、申告する必要があります。 |