相続後の手続き (11)限定承認の申述

限定承認 (民法第九百二十二条)条文を確認!
 限定承認とは、「借金は相続した財産の範囲内で支払う」という条件付きで相続するものです。
 相続人が数人いる場合に限定承認しようとするときは、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、相続財産の目録を作成し、相続人全員が共同で家庭裁判所に申し出る必要があります

 亡くなった方に借金があるのか、また誰かの保証人になっていないか定かでない場合、 プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続した方が安心かもしれません。
 しかし、『限定承認』は、注意すべき点がいくつかあります!
みなし譲渡所得税が課税される!
 限定承認の場合は、相続開始の日に被相続人から相続人に相続財産が時価で譲渡されたものとみなされます。 よって、相続財産が土地等の譲渡所得の基因となるものであれば、被相続人に対して譲渡所得税が課税されることになります (この場合の税額は被相続人の債務になるので、譲渡所得税と他の債務の合計額がプラスの財産の合計額を上回れば、 事実上、納税しなくてもよいということになります)。

承認方法 譲渡所得税の
負担者
譲渡財産
(譲渡所得税の対象)
   【限定承認の場合】

全売却

譲渡所得税
単純承認 相続人 実際に処分した財産
限定承認 被相続人 全相続財産
※ 限定承認の場合は、相続財産から控除される債務の額に譲渡所得税の額が含まれることになります。

譲渡所得の申告漏れが発生しやすい
 被相続人の所得税の準確定申告として、相続の開始を知った日から4ヶ月以内に申告しなければなりません。

相続財産を換金する場合、原則として競売によらなくてはならない
 上記の例外として、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を返済して、その競売を止めることができる。

 借金や債務保証などに不安があるなら、できるかぎり早い段階で調査をし、限定承認するかどうかを検討する必要があります。