相続税申告 (13)遺産分割が決まらない場合には…

 もし遺産分割協議でもめて、10ヶ月(相続税の申告期限)以内 に遺産分割協議書をまとめることができず、相続財産の分割協議が成立していないときは、 各相続人などが民法に規定する法定相続分等の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算をし、 申告と納税をすることになります。 相続税の申告は、相続財産が分割されていない場合であっても上記の期限までにしなければなりません。
 場合によっては分割協議書がある場合の2倍か、それ以上の相続税を支払うことになってしまいます。
 遺産分割が決まらない場合には、どのようなデメリットが出てくるのでしょうか?

【遺産分割が決まらない場合のデメリット】
① 預金が封鎖されたままになる。
② 配偶者の税額軽減のメリットが受けられない。(宥恕規定あり)
③ 小規模宅地等の評価減が使えない。(宥恕規定あり)
④ 物納ができない。
⑤ 農地等の納税猶予が受けられない。
※後日分割決定時に②③の特例を適用したい場合には、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出。
 しかし、法定相続分の割合で申告した後に、遺産分割が決まり、その分割に基づき計算した税額と申告した税額とが異なるときは、 実際に分割した財産の額に基づいて修正申告又は更正の請求をすることができます。
 ◆修正申告……申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が多い場合
 ◆更正の請求…申告した税額よりも実際の分割に基づく税額が少ない場合
        (分割のあったことを知った日の翌日から4か月以内
 なお、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が適用できるのは、原則として申告期限から3年以内に分割があった場合です。 ですから、最低でも3年以内には遺産分割をまとめたいものです。

 また、修正申告をする場合、原則として延滞税がかかりますが、遺産分割の遅れにより修正申告をする場合には、この延滞税がかかりません。

 遺産分割をする際に、相続人の中に未成年とその親権者がいる場合などは、特別代理人の申請をする必要があります。 通常、未成年の契約等には親権者がサインや捺印等をすることになりますが、遺産分割の場合、親権者が自己の利益を守るために この利益を犯す可能性があり、利益相反になるため、親権者が遺産分割協議書にサインすることができないのです。
 特別代理人の申請には、多少の時間を要しますので、ご注意ください。