相続税申告 (12)遺産分割の仕方で相続税は変わる!

 遺言がない場合、相続人全員で話し合い、遺産分割を行います。
 もちろん、相続人の生活状況や心情的な面も考慮して遺産分割を行いますが、 安易な決め方で遺産分割を行うことで相続税が高くなってしまうことがあります。
 ちょっとした工夫や調整で、相続税を引き下げることができると知っていますか?
 遺産分割をする際には、じっくり検討し、最善の遺産分割になるようにしていただきたいと思っています。

 では、実際に遺産分割をする際のポイントはなんでしょうか?具体例をいくつか挙げてみましょう。
不動産を相続する場合には?
   値上がりが予想される土地は、孫などの世代が相続するようにすると有利

小規模宅地等の特例を最大限活用するためには?
   小規模宅地等の特例は、配偶者以外で受けると有利
   二次相続において小規模宅地等の特例を適用する土地を考慮すると有利

税額計算の規定を活用するには?
   未成年者・障害者控除の不足額を扶養義務者から控除できるようにすると有利

配偶者の税額軽減を有効活用するためには?
   代償分割(財産を取得する代わりに金銭等を交付する方法)を用いて、財産の取得額を調整すると有利

不動産等を譲渡する予定がある場合には?
   譲渡所得税の特例等が利用できる人が相続し、代償分割により金銭を交付するようにすると有利

広い土地を分けて相続した時には?
   土地の評価額が引き下がる形で分割すると有利(不合理分割に注意が必要です)

 被相続人の財産の状況や相続人の心理的な状況により、そのご家族に一番良い遺産分割は違います。 上記の①~⑥は一般的な例に過ぎないので、遺産分割の前にご相談いただきたいと思っています。

 また、被相続人が不動産の貸付け事業などで収入を得ていた場合で、配偶者が主婦でご自身が受け取る年金額が少ない場合などに、 配偶者が収益物件を多数相続すると遺族年金がもらえなくなる可能性があります。
 被相続人が長年サラリーマンなどで、多額の厚生年金などの掛け金を支払ってきたのに、 ほとんどその年金が受け取れないということが有り得ます。
 遺産分割をする際には、配偶者の今後の生活資金の原資をどうしていくかということも重要です
 遺産分割の前に、もらえるはずのお金がないか確認しましょう。
 (参考)→相続後の手続き(7)遺族年金の請求

 相続税がかかることをご存じの方も、遺産分割の方法により相続税が変わることはあまり知られていないのではないでしょうか?
 相続が発生してから相続税のしくみを勉強するにはあまりに時間がなさすぎます。 専門家の知恵をうまく活用して、最善の相続にしていただきたいと思います。