遺言 (6)遺言を書くときの注意点

 特に、自筆証書遺言を書くときの注意点を挙げてみます。

自筆証書遺言書が、法律上有効である要件として、以下の4点があります。
(1)全文を自筆
 ここが一番大変です。全文を手で書かなければなりません。
(2)日付を自筆
 遺言書作成時において遺言能力があったかどうか、複数の遺言書が存在する場合にその順序を明確にするためです。 「●月吉日」は絶対にダメです。
(3)氏名を自筆
 氏名の記載がない場合には、たとえ筆跡から特定できたとしても、その遺言書は無効となります。
(4)押印
 実印である必要はありません。
 必ず必要ではありませんが、遺言書が複数枚になったときには、ページとページの間に契印をすると、 ひと綴りだったことを示すことができます。

【他には・・・】
土地や建物などの不動産、預金などの相続財産は、財産の特定ができるように記載しましょう。 不動産であれば、登記簿謄本に沿って書くと安心です。 預金などは、支店名や普通口座の別、口座番号や名義などを正しく記載します。
また、各財産の相続割合も明確に記載しましょう。

【注意点】
訂正方法も法律で厳密に定められています!民法第968条2項
「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、 これを変更した旨を附記して特にこれに署名し、且つ、その変更の場所に印をおさなければ、その効力がない。」です。

①訂正の場所を指定し
②2重線などで消し(消しても元の文字が判読できるようにしておく)
③欄外又は末尾に変更した旨を附記して署名し
④変更した場所に捺印します。
これに従わないと、遺言は変更がないものと扱われます。
従って、訂正するなら、初めから書き直した方が安心です。

【最後ですが・・・】
 遺言は、財産を誰に渡すかを伝えるものと思っている方が多いかと思います。 しかし、財産の内容だけしか記載されていない場合、相続人にとっては少し味気ないものになってしまいます。 意に沿わない内容の遺言は、相続人にとって受け入れがたいものである場合もあります。

 遺言では、「付言事項」として、法的効力を持たない内容も書き記すことができるのです。 いわゆる「備考」のようなものです。
この「付言事項」で、家族への思いや、 遺産の分け方を考えたいきさつ家族の成り立ちそれぞれの相続人に対する思いなどを書き記しましょう。
 もしも意に沿わない内容の遺言でも、遺言者の考えや思いに触れると、従おうという気持ちになるかもしれませんし、 なによりも、遺言者の思いを知ることは、残された家族にとっては大きな意味があると思います。
 残された家族へ思いを伝えるための「遺言」にしましょう。

 すでにメッセージ性のない公正証書遺言を作っている方には、 遺書や手紙を遺言と同封して保管しておくことをお勧めします。
 やはり一番大事なのは、ご家族の思いや愛情だと思います。 残していく方からの思いを、残される方が引き継ぐことが、相続で一番大切だと考えています。