遺言 (3)自筆証書遺言と公正証書遺言

 遺言は、法律の定める方式に従って作成しなければなりません。 その方式に従っていない場合には、遺言としての効力が認められません。 (民法第967・975条(特別方式)第976・984条)

遺言書にはいくつか種類があり、それぞれに書き方が決まっています。
普通方式の遺言は以下の3つの種類の遺言があります。

・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言

自筆証書遺言 (民法第968条) 条文を確認!
 自筆証書遺言は、遺言者が全文と日付を自分で書き、署名、押印します。
誰でも手軽に作成でき、費用もかからず、作成したことを秘密にできるなどの長所があります。 しかし、不備があると無効とされたり、執行が困難であったり、偽造、変造されたり、紛失、滅失したり、 様々な不安要素が含まれています。
また自筆証書遺言の場合には、相続の開始後3ヶ月以内に、家庭裁判所に検認してもらわなければなりません。

公正証書遺言 (民法第969条)
 公正証書遺言は、公証人役場に行くか、公証人を呼び、次の方式により作成します。
①証人2人以上の立会があること
②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
③公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ又は閲覧させること
④遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後、各自署名,押印すること
⑤公証人がその証書が方式に従って作成されたものである旨を付記して、署名、押印すること

 公正証書遺言は、多少の費用がかかりますが、文字が書けなくても作成できるほか、相続後の紛争を防ぐには有効です。 原本は公証人が保管するため紛失や改ざんのおそれがなく、家庭裁判所での検認手続がいらないなど多くの利点があります。
 未成年者、推定相続人・受遺者及びこれらの配偶者・直系血族、公証人の配偶者、四親等内の親族等は証人にはなれません。

自筆証書遺言 (民法第970条)
 秘密証書遺言は、自筆証書遺言と違い、他人に書いてもらったりパソコンなどにより作成することもできる方式です。 公証人役場に行く必要はありますが、その内容は公証人には秘密のままであり、保管もしてくれません。 次の方式により作成します。
①遺言者が遺言内容を記した遺言書に署名、押印すること
②遺言者が遺言書に封をして遺言書に押した印章で封印をすること
③遺言者が公証人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること
④公証人がその証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載し、遺言者及び証人とともに署名、押印すること

 相続人に多少でも争いが発生する可能性がある場合には、公正証書遺言を作成しておくことをお勧めします。 ご自分の家族が争うとは皆さん思いたくないものですが、それでも相続争いが増えているのは現実です。 公正証書遺言は、ご家族の相続手続きを簡略化する効果もあります。
 公正証書遺言まで作成して大事にしたくないとおっしゃる方は多くいらっしゃいますが、 そのおかげでご家族が安心して相続を迎えられるならば、作成の価値はあるのではないでしょうか。