生前対策 (5)生前贈与や売買契約により得られる効果…特定の相続人への財産の帰属

 よく聞かれる質問の中には
『相続で資産を渡すのと、贈与で資産を渡すのとどちらが税金上有利ですか?』
というものがあります。
 
 もしも、その渡したいと思っている資産が不動産の場合、多くの場合、相続で資産を渡した方が税金は安く済む方が多いでしょう。
なぜなら、
贈与税は1,000万円以上は税率50%
相続税は3億円を超える財産を持っている場合に税率が50%
になります。
また登記の際の登録免許税も、
贈与では2%に対し、
相続では0.4%です。
 多くの不動産の場合、その時価が1,000万円を超えるものが多いでしょうから、 税率を考慮しながら贈与しようとすると、何回かに分けて贈与するよりほかありません。

 しかし、将来の相続を考える際に、少しでももめごとの火種を消しておきたいと考える場合には、『贈与』は有効です。 同時に『譲渡(売買取引)』も検討することをオススメします。
 不動産などの場合、登記することでその権利を確定させることができます。

例えば・・・

(父・子供(兄)・子供(妹)の家族)
父が3,500万円(時価3,000万円)で買った土地建物に、子供(兄)が住んでいる。 父は老人ホームに入り、自宅は売却してすべて現金化してしまったため、現在、父の財産(時価4,000万円) のほとんどを子供(兄)の不動産が占めている場合

→この状態で相続が発生した場合、
子供(兄)と子供(妹)で法定相続分1/2ずつ分けると、一人2,000万円ずつだが、 子供(兄)自宅の不動産が3,500万円のため、その自宅の不動産の名義を子供(妹)につけなければ均等に分けられない!

→もし、相続が発生する前に、子供(兄)が父から買い取って入れば、父の財産はすべて現金になるので、相続が発生しても均等に分けられます。
 父から子供(兄)が買い取る時の税金はどうなるでしょう?
 父・・・3,500万円で購入したものを3,000万円で売却しているため、譲渡損となり、譲渡所得税はかからない。
 子供(兄)・・・購入なので、贈与税等はかからない。登記の際、登録免許税は支払う必要あり。

 上記の例とは少し異なりますが、この不動産はこの人にという指定がしたい場合、『遺言』のほかに『死因贈与』という方法もあります。
 ◆ 死因贈与
 贈与者と受贈者双方の合意契約が必要。 決まった書式、形式がありません。
 ●贈与者が一方的に撤回することが可能。(遺贈に関する規定を準用する為)
 ●受贈者は相続人に限られない。
 ●義務付き、負担付きにすることが可能(負担付き遺贈)。
 ●贈与者が生きている間に、始期付き所有権移転の仮登記が可能。
※ 民法第554条(死因贈与)で遺贈に関する規定を準用することとなっています。

 相続が発生した場合のことを想定し、あらかじめ財産の所有者を決めておいた方がいい場合が多々あります。 そのような場合には、『贈与』や『譲渡(売買取引)』で財産の所有者を先に変えておくということを考えましょう。
 それが、将来のご家族の安心につながることがあります。