相続後の税金 (5)相続した土地を売却した場合の税金

 土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、事業所得や給与所得などの所得と分離(分離課税)して、 計算することになっています。 (所法33、38、60、措法31、32、措令20、所基通37-5、38-9、49-3、60-2)
 譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算します。

●所有期間5年以下の土地や建物を売ったとき
課税短期譲渡所得金額=土地や建物の売却代金-(取得費+譲渡費用)-特別控除
税額・・・30%(住民税9%/所得税住民税合計39%)

●所有期間が5年を超える土地や建物を売ったとき
課税長期譲渡所得金額=土地や建物の売却代金-(取得費+譲渡費用)-特別控除
税額・・・15%(住民税5%/所得税住民税合計20%)

(※1) 取得費とは、土地や建物の購入代金などをいいます。 なお、建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。 もし土地や建物の取得費が分からなかったり、実際の取得費が譲渡価額の5%よりも少ないときは、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができます。
なお、業務に使われていない土地建物を相続や贈与により取得した際に相続人や受贈者が支払った登記費用や不動産取得税の金額も取得費に含まれます。(所基通60-2)

(※2) 譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した費用をいい、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、 売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などです。

相続税が取得費に加算される特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)があります。
この特例は、相続により取得した土地、建物、株式などを、一定期間内に譲渡した場合には、 相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるというものです。

取得費加算の特例

(1) 特例を受けるための要件
①相続や遺贈により財産を取得した者であること。
②その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
③その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

(2) 取得費に加算する相続税の額
イ 土地等を売った場合
 土地等を売った人にかかった相続税額のうち、その者が相続や遺贈で取得したすべての土地等(注)に対応する額
ロ 土地等以外の財産(建物や株式など)を売った場合
 土地等以外の建物や株式などを売った人にかかった相続税額のうち、譲渡した建物や株式などに対応する額

■ 相続によって取得した資産の取得の時期
相続で取得したときは、死亡した人の取得の時期がそのまま取得した人に引き継がれます。

 相続税を支払うために被相続人が所有していた不動産を売らなくてはならないということがよく起こります。 そういった場合には、相続が発生する前に売却するのではなく、相続後に売却し、上記の特例を用いながら、 うまく税金対策をしましょう。